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偽の前提で繰り返される結論

論理学では「前提が偽であれば,そこから導かれる結論は全て真」とされます。

常識的に考えれば,前提が偽であればそこから導かれる結論は全て偽と感じられるかもしれませんが,論理学的には,「前提が偽であれば,そこから導かれる結論は全て真」なのです。いわば1+1=2と同じようなもので,常識の方が間違いなのです。

私はこの辺の論理は強くありません。落ち着いて考えれば分かりますが,これを言葉ですらすらと言ったりはできませんが,あり得ない(偽の)前提で導かれた結論は全て真なのです。すなわち,偽の前提で議論されることは,すべて真になってしまいます。要は,何でもあり。好き放題。フリーハンドになってしまうということです。

分かりやすい例を挙げます。
「あなたが天才ならば,この問題は直ぐに解けます。」
という文を考えます。
「あなたが天才」というのが真であれば,「この問題が直ぐに解ける」かどうかの真偽が問題になり,直ぐに解ければ,この文章は全体として真であり,解けなければ偽となります。

しかし,「あなたが天才」という前提が偽であれば,「この問題が直ぐに解ける」のが真であれ偽であれ,この文章は真となります。

前提が偽なのですから,あり得ない前提での結論なわけで,この問題が直ぐに解けるかどうか関係ないわけです。この様な論理は案外よく使われます。

かなり頭が良いと思われる方々が延々と,私には間違っていると思われる議論をされるのを,目の当たりにしてきましたが,この方々は論理学の仕組み通りに動いていますから,やはりアタマは良いのでしょう。

アタマの悪い私などには,「前提が真の場合にのみ,結論の真偽の区別ができる」とでも言い換えた方が分かり良いです。

あり得ない前提を強く否定する際に使う手法としてよく使われます。「お前が天才なら,俺はスターだ」とか。どうせお前が天才な訳はないのだから,その前提でなら何を言ってもOKと。前提があり得ないわけですから,結論に何を持って来ても良いわけですから,真の結論を言う必要は無くて,全くあり得ない結論を言う方が効果的でしょう。論理をこの様に使っているうちは実害は無いですが,恐いのは,偽の前提で行われる何でもありな結論が国の進路を決める法整備などにも使われてしまう事です。

アメリカはかつて911後,フセインが核兵器を持っているとしてイラクを攻撃しました。
結果的には,無かった訳ですが,前提が偽だったのですから,攻撃してもしなくても真だったわけです。何とも恐ろしい話です。前提の真偽をきちんと確かめないといけない訳で,偽の前提で事を起こした事は非難されるべきです。しかし攻撃したいと言う結論が先にあれば,この論理を悪用して,わざと偽の前提で事を成すことすら出来てしまいます。

もっと基本的な事を言えば,前提にしろ結論にしろ,論理法則は命題,すなわち誰が見ても白黒がはっきりすることがらについてのみ成り立つものです。当然の事ながら「○○はxxである」の○○にもxxにも,きちんと定義された表現が必要です。例えば,「クレオパトラは美しい」は命題にはなり得ませんし,「象は大きい」もだめです。このことは,中学校で学んだ事柄ですので,説明するまでもないことでしょう。この手のスローガンはそもそも論理には掛からず,真偽の区別が出来ませんので全く意味を成さないということです。
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コメント 2

majyo

今日のお話はとても難しいのですが
閣議決定を受けての質疑では
アメリカと共に戦う事はありえないと言いましたね。あの人は
これが偽の前提という事でしょうか?
9.11でも先に核兵器あり が使われて
結果的には、無いにも関わらずイラク戦争で多くの人が無くなりました。
今、言葉のまやかしが多く
真理を見抜けないと、正しいように錯覚します。
これは、ゴーストライターが用意した言葉だと思いますが
偽の前提になるのでしようか?
トンチンカンでごめんなさい

by majyo (2015-05-17 22:04) 

Enrique

majyoさん,ありがとうございます。
あの方には,論理などあったものではないですから論戦挑んでも全く相手にならないのですね。そう言う意味で恐るべき人です。一刻も早く退場してもらうのが大多数の国民のためですが,あの方を動かしている人たちの,少しは理性のある人たちがどう考えているのかです。
論理的なマヤカシなのか,論理的には正しいがそれを悪用しているのか。はたと思いついたのがこの記事(覚え書き)でした。
論理の悪用,重要情報の隠蔽,騙し,懐柔,なんでもありの様な気がします。
by Enrique (2015-05-19 07:52) 

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