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日米原子力協定がらみの報道

9/25の日経新聞(電子版)に以下の様な記事が載っていました。朝日新聞やNHKでも報道されたようですが,この件に関してのマスコミの報道としては,最も詳しいものでしょう。

日米原子力協定延長へ トランプ米政権方針
日本、使用済み核燃料の再処理継続
2017/9/25 1:31日本経済新聞 電子版
 【ワシントン=川合智之】トランプ米政権は23日、来年7月に更新期限を迎える日米原子力協力協定に関し、破棄や再交渉をせず自動延長する方針を明らかにした。同協定は使用済み核燃料の再処理などを包括的に日本に認めている。日本政府も延長を求めており、協定は現行のまま延長となる公算が大きくなった。

 米国務省報道官は日本経済新聞の取材に「協定の終了や再交渉の意図はない」と述べた。北朝鮮の核・ミサイル開発を抑止するために日米の緊密な連携が重要となっており、両国関係に波風を立てる協定見直しは避けたい意向もあるとみられる。

 日米原子力協定は1988年に発効し、来年7月に30年の期限を迎える。期限の6カ月前までに日米いずれかが破棄や改定交渉を申し出なければ協定は自動延長される。自動延長後も、どちらかの政府が6カ月前に通告すると協定を終了できる。

 同協定は核兵器の原料になるプルトニウムの平和利用を認めたもので、核兵器の非保有国で日本が唯一、再処理などの包括同意を得ていた。これによって原発の使用済み燃料を再処理し、プルトニウムを取り出して再び燃やす「核燃料サイクル政策」が可能になった。

 包括同意が取り消されれば、再処理の個別工程にそれぞれ米国側の事前同意が必要になり、青森県六ケ所村の再処理工場の稼働やサイクル政策の実現は事実上難しくなる。このため日本政府はこれまで現行協定の延長を米側に要請してきた。

 一方、日本は国内外に原爆約6000発に相当するプルトニウム約47トンを保有する。プルトニウム燃料を使う高速増殖炉もんじゅは昨年に廃炉が決まり、既存原発でプルトニウムを燃やす「プルサーマル計画」も福島原発事故の影響で停滞している。日本は現時点で使い道が不明確な余剰プルトニウムを大量に抱えており、サイクル政策の行き詰まりは明らかだ。

 日本のプルトニウム大量保有には国際的な懸念も高まっている。核不拡散政策を推進したオバマ前政権のカントリーマン前国務次官補は13日の首都ワシントンでの会合で、日本側のプルトニウム削減の取り組みは不十分と批判した。韓国なども日本と同様に再処理を認める原子力協定を米国に求めており、日本が再処理の「特権」を維持する妥当性の議論もある。

 さらなる懸念は来年にも完成予定の再処理工場だ。原子力規制委員会による安全審査は最終段階まで来たが、運転が認められてフル稼働すれば年8トンのプルトニウムが新たに抽出される。安易な稼働は使うあてのないプルトニウムを増やすだけで、核セキュリティーの観点では危険性が高い。

 トランプ米政権も日本のプルトニウム使用計画について引き続き説明を求めていく方針。日本はプルトニウムの削減に向け、現実的な道筋を国際社会に示すことが求められる。
この日経の記事は,どこぞの新聞ほどひどいものではありません。事実に基づいているのでしょう。しかし,不思議な記事です。

いくつか疑問点があります。
・2国間の協定であり,日本語でも書かれ,それに関わっている人が当然日本にもいるはずなのに,アメリカに取材している点
・「日本政府も延長を求めており」とありますが,政府が国民にその事を質した形跡が無いこと
・米側は,「両国関係に波風を立てる協定見直しは避けたい意向もあるとみられる」これは全く記者の主観でしょう。30年間で様々な環境変化はあるはずで,見直すのが普通でしょう。
・来年7月に期限を迎えるが「自動延長後も,どちらかの政府が半年前に申し出れば終了可能」とあります。これが本当だとすれば,少しは気が楽ですが,協定の更新時期でさえろくに報道もされず,政治論点化もしないのに,それ以外の時期に話題にも登るでしょうか?
・日米間の協定などは,大概みかけ上は対等になっています。しかし,日本側がアメリカ側に要求した事が何かあったのででしょうか?内容どころか,対等なはずの通称「年次改革要望書」を終了させた鳩山首相がルーピー呼ばわりされてあっという間に失脚したのは記憶に新しいところです
・この協定により非核兵器保有国で唯一プルトニウムが扱えるとあります。協定の包括合意が無いといちいちお伺いを立てないといけないと。そのことがそんなにメリットなのでしょうか?

一応この記事は,プルトニウムの始末をどうつけるのだ?と結んでいるところは真っ当な指摘だと思いますが,国際社会が懸念するプルトニウム問題を,当の日本社会が何も問題視せずやり過ごそうとしているところが異様でもあります。
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momotaro

日経記事と貴兄の解説でこの問題の概要を知ることができました。
日本政府は、プルトニウムを財産のように考えて、蓄えを増やしているのですね、こんな危ないものを売る気でいるのでしょうか?
究極の死の商人ならぬ死の商国です。
>国際社会が懸念するプルトニウム問題を,当の日本社会が何も問題視せずやり過ごそうとしているところが・・・
問題ですね、異様ですね!
by momotaro (2017-11-02 10:50) 

Enrique

momotaroさん,既にもう2クール目が終わり,3クール目が来ようとしています。30年は一世代ですから,代替わりすれば,見直しや止めることがあっても良いと言う想定では無いのでしょうか。
原子力協定にしろ地位協定にしろ,はっきりとした2国間の協定ですら,明らかにされず政治論点化もしません。ましてやお題目すら上らない密約体系はどれほどのものなのでしょう。
by Enrique (2017-11-07 09:24) 

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