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「平和主義と格闘する日本」

Japan Wrestles With Its Pacifism と題した7月20付けのNew York Timesの社説があります。
以下内容を翻訳付きで転載します。

A vote in the Japanese Parliament last week brought Prime Minister Shinzo Abe a step closer to one of his most important national security goals — a law that would give the Japanese armed forces limited powers to engage in foreign combat for the first time since World War II. But the way Mr. Abe engineered the victory has caused great anxiety about whether he intends to honor Japan’s deep postwar commitment to pacifism.
先週の日本の国会の議決は,彼の最も重要な国家安全保障の目標に一歩近づく事を安倍晋三首相にもたらした。— 日本の防衛軍に第二次世界大戦以来,初めての海外の戦闘に従事する限られた権限を与えるであろう法案である。しかし,安倍氏が勝利を設計した方法は,彼が平和主義に対する日本の深い戦後のコミットメントを尊重しようとするかどうかについて大きな不安をもたらしている。

That the world’s third-largest economy should seek a greater international role 70 years after the end of World War II should come as no surprise — especially in Asia, where China is becoming more assertive. The problem is less that goal than the way Mr. Abe is pursuing it.
第二次世界大戦終了後70年の世界第3位の経済大国に,大きな国際的役割を求めるべきであることは驚くことではない — 殊に中国がより断定的になってきているアジアにおいて。問題は,安倍氏がそれを追求している方法よりも,その目標が少ないと言う事だ。

At the core of the debate is Japan’s Constitution, imposed by the American Army in 1947. It has permitted the Japanese military, known as the Self-Defense Forces, to engage only in self-defense. That meant that a large and technologically advanced military could not engage in “collective self-defense” — aiding friendly countries under attack — and was thus far more constrained than the armed forces of other nations.
議論の中核は,1947年アメリカ軍によって課された日本の憲法だ。それは,「自衛隊」として知られる日本軍に,自己防衛のみを許可している。攻撃を受け友好国を支援 — それは大きくは技術的に高度な軍が「集団的自衛」 — 攻撃を受けている友好国を助けること—に従事できなかったことを意味し,他国の軍隊よりも制約された。

Mr. Abe has long argued for modifying the Constitution so that Japan could assert itself as a “normal” country freed from postwar constraints. Last year, he announced his intention to prepare Japan’s military for expanded missions like defending an American ship under attack, destroying a North Korean missile headed toward the United States or playing a larger role in United Nations peacekeeping operations. He also promised that Japan would be a fuller partner in countering China and its sweeping claims to most of the South China Sea.
安倍氏は,長らく日本は戦後の制約から解放され,「通常の」国としての地位を主張することができるよう憲法を改正するための主張をしてきた。昨年彼は,攻撃を受けている米国船を守ったり,米国に向かう北朝鮮のミサイルを破壊したり,国連平和維持活動で大きな役割を果たすといった拡張したミッションのために日本の軍事を準備する意向を発表した。彼はまた,日本が南シナ海のほとんどに,中国とその抜本的な権利主張に対抗できる充実したパートナーとなることを約束した。

The impediment to these ambitions was Article 9 of the Constitution, which says the Japanese people “forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.” Under normal circumstances, changing the article would mean revising the Constitution, which would require two-thirds approval in both houses of Parliament, followed by a national referendum.
これらの野望への障害は,憲法第9条の,日本人が「永遠に国家の主権,国際紛争を解決する手段としての力の威嚇または使用するような戦争を放棄する」であった。通常の状況下では,その文言を変更するには,国民投票に続く国会の両院で三分の二の承認を必要とする憲法改正を意味する。

Mr. Abe circumvented that process by having his government declare a reinterpretation of the Constitution and then following up with legislation in a Parliament where his Liberal Democratic Party-led coalition has a majority in the upper and lower houses. The lower house approved the package of 11 security-related bills last Thursday; the upper house is expected to do the same. Unlike a formal constitutional change, ordinary legislation only requires a majority vote and there is no referendum.
安倍氏は,彼の政府が憲法の再解釈を宣言した後,彼の自民党主導の連立政権は衆参の過半数を持つ議会で法案のフォローアップによって,そのプロセスを回避した。衆議院は先週の木曜日,11の防衛関連法案のパッケージを承認し,参院でも同様のことが期待されている。正規の憲法改正とは異なり,通常の法律は多数決のみであり,国民投票は無い。

Mr. Abe’s tactic was not original. Past governments have also chosen to simply “reinterpret” the Constitution. But in this case the proposed changes went to the very heart of Japan’s postwar charter, and were far too consequential for the process to be short-circuited. The critics included a majority of Japan’s constitutional scholars; nearly 10,000 people, including scholars, artists and a Nobel laureate, signed a petition opposing the new legislation, and tens of thousands of people have participated in demonstrations. Polls show voters oppose the legislation by a two-to-one margin.
安倍氏の戦術はこれが最初ではなかった。過去の政府は,単に憲法の「再解釈」を選択した。しかし,今回の場合提案された変更は,日本の戦後憲章の極めて心臓部に向けたものであり,これまでのプロセスが短絡されるのはあまりにも必然だった。反対派には日本の憲法学者の大半が含まれ,学者,芸術家やノーベル賞受賞者を含む約1万人が,新しい法律に反対する請願書に署名し,数万人がデモに参加している。世論調査は,有権者の2対1の差で法案に反対を示している。

Mr. Abe is already held in suspicion by many people in Japan and in the region because of his appeals to Japan’s right-wing nationalists and because of doubts about whether he genuinely acknowledges and regrets Japan’s wartime aggression and the atrocities committed by its government and its armed forces. The concern now is that he will lead a country that has long embraced pacifism into war.
安倍氏は,すでに日本の多くの人々に疑いを持たれている。日本の右翼民族主義者たちへのアピールのためではないのか,あるいは,彼が日本の戦時侵略とその政府とその軍隊が犯した残虐行為を純粋に認識し後悔するかどうかの疑念である。その懸念は,彼が今長く平和主義を受け入れた国を戦争に持って行くということだ。

Democratic leaders are more successful when they can persuade voters to support major policy initiatives and when they follow procedures that ensure changes are broadly accepted. For many Japanese, Mr. Abe does not appear to have made his case or picked the right way to move forward.
民主党の指導者たちは,それらが,主要な政策主導権への支持を有権者に説得することができるとき,あるいは,それらが,広く受け入れられている変更の確認手順に従うときに,より旨く行くとする。多くの日本人は,安倍氏が議論したとも前進するための正しい方法を選択したとも見ていない。
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majyo

読みが間違えているかもしれませんが
ニューヨークタイムズは客観的に見ていますね
正しいとも間違えているとも言っていないような気がします。
新聞とアメリカ政府とは、少し違うのかなあ
しかし、今の日本の状況は伝えていると思いますが・・・・

by majyo (2015-07-23 21:17) 

Enrique

majyoさん,ありがとうございます。
記事には敢てコメントを入れませんでしたが,日本のどこかの新聞よりもよほど客観的です。安倍氏に関しては,右派の歴史修正主義者と見ているようです。尤もな見方です。彼の春の上下院での演説の時は大した記事を書いていなかったと思います。
この社説に関しては,「日本国民は戦争出来る事を選択していないぞ」「安倍は国民から疑われているぞ」と指摘しているように読めます。NYTはリベラル派の新聞と言う事もありますが,信頼性は高いと思います。
アメリカには,日本を犬の様に思っている勢力と,対等なパートナーと思っている勢力とがある様です。NYTは後者だと思います。「日本はなぜ〜」にも書かれていましたが,前者勢力にばかり追従するものだから,不利益ばかり被るのだということでしょう。
by Enrique (2015-07-23 22:42) 

gonntan

日本はアメリカにとって対等な勢力なんですかねぇ・・
対等って普通は「意見が言える」ことだったり
嫌なことはイヤって言える自由があるものですよね・・
日本は使わないだけなのかもしれませんね><
by gonntan (2015-07-23 23:15) 

Enrique

gonntanさん,ありがとうございます。
「日本はなぜ~」にも書かれている事ですが,大変残念な事に日本の官僚機構は,米国の,日本から搾取しようとする勢力とのみコネクションを持っているということです。その人達の言う事さえ聞いて国民を犠牲にすれば特権利益が得られますから止められません。対等な交渉なら特権利益など呉れないでしょうから。ペリーの黒船以来不平等条約というのがありましたが,戦後またそれをやっていると言う事でしょう。
本来なら,そのような事実を国民の前に明らかにして,国民の意思決定を仰ぐべきなのですが,不都合な事実は伏せておくのでしょう。
by Enrique (2015-07-24 20:43) 

Ujiki.oO

ただただ、あきれております。 現総理大臣への失望も、落胆も、そして絶望も、通り過ぎております。 全ては、2014年末の選挙投票率にこそ原因が存在することを、デモの参加者も、18歳以上の全国民が真剣に反省するべきだと存じます。 公明党の重罪は大変重いものです。 公明党の連立参政判断が重罪です。 「ストップ・ザ・投票権利の棄権」こそは国民全員が反省するべき重要項目です。 うら若き中学・高校生らを導く教諭達による「選挙へのクリーンな教育」は重要で、無垢な生徒に正確な選挙常識を教える末端であって欲しいと願います。 誰が鈴を付けるのか?! 司法の誰が逃げ腰にならずに鈴を付けるのかが鍵だと存じます。 現内閣法制局長官は異常な状況の中、最高裁判所こそが「内閣と国会に対する憲法違反」の判決を言い渡さなければなりません。 それでは誰が裁判所に訴えるのでしょうか? 最高検察あたりは「行政」そのものですから、反対している団体なり個人の集団が起訴するしか無いのだと思えてきます。 自民党内部には「鈴を付ける」議員はOBを含めて不在ですね。 実に民主党こそが、反旗を翻せるチャンスなのですが、戦略的行動力が無い。 2014年末の選挙戦で立候補者を出せなかった責任が、最初から戦えなかった選挙の基本的な惨敗。 弱い野党しか育たない選挙制度で、自業自得の野党弱体化。 それでも自民党を機能不全にさせる為の選挙の準備が急がれます。 団塊の世代の多くの元企業戦士達が、無所属ではなくて、新たな「党」を立ち上げながら、選挙軍資金こそをインターネットを使って、一般公募して、既得権益に呑み込まれること無く全国から立候補するチャンスは次回参議院選挙でしか無いだろうと存じます。 流されれば・・・・団塊の世代は経済の高度成長に寄与した「小さな歯車」集団として、ただの高齢者集団に進み、実に政府からは捨てられる運命を辿る老人人口数だけとなります。
by Ujiki.oO (2015-07-25 11:15) 

Enrique

Ujiki.oOさん,ありがとうございます。
余りの惨状に,ついに良識派も声を上げたのですが,一旦は国民に見限られたゾンビがやる事ですから,まともなはずは無いのですが,まんまと大手を掛けられてしまいました。一応は民主的な手続きで国民を追い込んで来たのですから,ぼんぼんのアベさんにしたら何で国民が騒いでいるのか分からないでしょう。逆におじいちゃんと一緒と胸を熱くしているかもしれません。これが上手く行ったら大変なご褒美を貰えるのですから必死です。この時期,目覚めて勇気を振り絞ってデモに行っている若者もいれば,いまだにネトウヨのおかしな言説を信じている若者もいるようです。
デモは民主国家の意思表示として大切です。NHKや読売は伝えませんが,就職控えた学生や功遂げたの益川氏らが先頭に立って反対している姿は国民に共有されると思います。
国際的にもしっかり報道されますが,これは国内問題なわけですから,DVだと言ったところで我々自身の力で何とかして行かないといけません。歪んでいると言っても,曲がりなりにも民主国家,実効的に国政に意志を反映するのは選挙権しか無いのですから,昨年暮それを放棄した国民は,大反省してもらわないといけません。野党にしっかりしてもらわないといけないのはもちろんですが,昨年暮れの時点だって戦略的投票はあったはずですから。しかし,こうなった以上,あらゆる方法で国民主権を取り戻さないといけないと思います。

by Enrique (2015-07-25 19:04) 

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