SSブログ

天災は忘れた頃にやって来る [科学技術雑感]

普通,「忘れた頃」というのは,長い時間が経ってのことです。

しかしながら,記憶が新しいうちの「よもや?」というのも不意討ちになります。
熊本の地震は,14日21時過ぎのM(マグニチュード)6.5のものが本震だと思われていて,それの余震は「来るぞ・来るぞ」とは言われていましたが,16日1時25分にはM7.3のものが来てしまいました。

これまた,人知の予想を越えたものです。地震は忘れてなくても,本震より大きなものが来るなど誰が予想したでしょうか?

専門家集団の気象庁でさえ15日,14日の地震の余震として,15日の16:00から3日以内にM6.0以上のものが来る確率20%,M5.5以上が40%としていました。地震の予知は不可能ですが,余震のデータは多いためその統計的性質は比較的良く分かっているのでその様に出したのでしょう。より小さなものが来る確率は上がるということですから,逆にM7越えなどの大きなものが来る確率はほぼゼロということでした。

しかし,大きなものが発生してしまいました。エネルギーで言えば16倍のものが余震というのは,さすがにきびしいのでしょう。気象庁は,16日未明に来た方を本震として,14日のものを前震だったとしたようです。

あくまでも,余震発生確率など過去の統計的数字でしかない上に,本震だと思っていたものが前震だったという事であれば,おおもとの捉え方が違うわけですから,余震発生確率など全く意味の無い数字だった事になります。

そもそも前震・本震・余震などとは後になって分かる事ですし,便宜的に名付けているだけのことでしょう。しかし,余震と言えば,本震よりも小さくなると,皆がそう思っていたはずです。せめて,「同等以上のものも来る可能性がある。」とでも言ってもらえれば,多少なりとも被害が縮小した可能性は無いでしょうか?しかし,その様に判断出来るデータが無かったのであれば,仕方ありません。

東日本大震災でも発生直後は,確かM7.9と打ったはずです。最終的にはM9になったわけですから,なんと45倍も見積もりを誤った事になります(太平洋はさんだ米国USGSは直後からM8.9としていました)。津波の予想もより小さなものでした。気象庁の地震情報を責める積もりはありません。分からないものは分からないと言うのが科学的態度です。我々は「一寸先は闇」の世を生きているわけです。後の大きな方で発生した行方不明者の一刻も早い救出を祈るのみです。
nice!(7)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 7

コメント 8

majyo

これは本当にビックリしました。
余震の心配があるとは言ってましたが
それ以上の地震があり、後でこれが本震だと言われても・・・・
忘れないうちに来ましたね。
ああ・・・・ため息です
by majyo (2016-04-16 18:19) 

Enrique

majyoさん、余震が本震より強く、「実はこれが本震でした。」という事ですね。余震は有るとは言っていましたが、余震が本震より強いと言うのはありえません。自然は、愚かな人間を簡単にあざむきます。

by Enrique (2016-04-16 19:12) 

gonntan

断層がたくさんあって、別々に地震が発生したのでは、ともいってますし、専門家だとまぁ分からないっても言えないですしね(´・ω・`)
by gonntan (2016-04-16 22:50) 

Enrique

gonntanさん、ありがとうございます。
地震活動は何億年も続いているのにまともに人間が持っているデータは100年余り。しかも大きな地殻変動から見たら、地震活動なんて雑音程度の微小な変動でしょう。後付けの講釈しか出来ないですね。
by Enrique (2016-04-17 07:47) 

BrerRabbit

>分からないと言うのが科学的態度
全く仰るとおりです、官僚といい科学者といい真実に向き合うことが出来ない体質なんでしょうね。政治屋はこの中にも入っていませんが・・
by BrerRabbit (2016-04-17 15:53) 

Enrique

BrerRabbitさん,ありがとうございます。
分からないから,安全サイドに見ないといけないのに,科学的に分からないと言うことを悪用する人たちがいます。科学的に証明出来ないから,危険でないとかいう輩です。
人為が自然の力に克てるなどというのは,自然と共存を図るもともとの日本的発想では無いです。
by Enrique (2016-04-17 21:51) 

momotaro

たかだか100〜200年の観測で予測ができると思うことが間違いですね、予測する方も、それを信じる方も。
謙虚になって再スタートですね。
政治は科学の不確かさをちゃんと織り込んで政策を立てて欲しいですね。
by momotaro (2016-04-22 10:27) 

Enrique

momotaroさん,有難うございます。
科学的な数字には決定論的なものと統計的なものがあります。
地震データは統計的な数字です。何十億年もの地殻変動のデータのごく最近の100年余りのデータで抜き取り検査しているみたいなものです。日本人の平均像を2名位の例で見ているようなもので,当たる訳がありませんし,赤ん坊か老人かもわからない1名をいくら詳しく調べても分かりません。
直ちに危険かどうか分からないから「大丈夫」というのは,最もやってはならない科学の使い方で科学の弱点の悪用です。
むしろ分析や論理と言った科学の強みを使って,危険をあぶりださないといけないのにです。
by Enrique (2016-04-25 18:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。