SSブログ

エジソンの功績 [科学技術雑感]

一般にはエジソンは発明王として知られ,生涯の発明数が千件とも三千件とも言われ,科学技術に偉大な功績をした人物として語られることが多いと思います。実際ノーベル賞の候補にもなっていたらしいですし,学術団体IEEEには,エジソン・メダルというのがあり,電気電子関連技術に功績のあった人物に贈られる最高の賞として知られます。

我が国でも偉人伝で語られる人物ですから,超有名人に違いありません。学術賞の名前に冠せられるくらいですから,当人の業績たるや比すべきものが無いと見るべきでしょうか?エジソンの功績というのは,そんなに素晴らしいものなのでしょうか?

電球や電蓄などの数々の発明を成し遂げ,電力事業を立ち上げ,GE社の元を作ったと。

電球の発明に関しては,当時から法廷での係争があったようで,こちらのページなどを読むと,とても彼が発明者とは言えません。歴史とはそういうものかもしれませんが。

京都の竹からフィラメントを作ったという有名な話は本当の様ですが,それまでにあった他の人の電球のアイデアや公開実験を盗用しながらも,カネにモノを言わせて裁判を有利に戦い,当時最も持ちの良い電球を独占的に量産したというのが実態の様です。竹の繊維からフィラメントを作るというアイデアですらエジソンらのものが最初ではなく,25年も前に作って使っていた人がいたそうです。

前にあろうが無かろうが,先に特許出願していれば権利になるのでは?と考える方もいらっしゃるかも知れませんが,アメリカでは伝統的に先発明主義ですから,出願時期よりも実績の方が重視されます。むしろ不利な裁判戦を勝ち抜いた彼の不屈の精神力の方が評価されるべきかもしれません。そして電球の独占量産化で大もうけをしたのは間違いなくエジソンです。実業家として才覚は素晴らしいですし,多くの人の暮らしを便利にしたのも事実でしょう。

どうも,エジソンの事業とそれをめぐる発明には,手放しでは称賛出来ないこの手の話が常について回るようです。電蓄しかり,直流送電事業しかり。直流送電事業に関しては,完全に失敗しましたが,彼を慕って海を越えてやって来たニコラ・テスラの開発した交流システムの優位性が全く理解できなかったばかりか,あきらめて退社した彼の開発した交流システムを葬り去る為に,ここでも非常にダーティな事をやります。大金を使って,交流電気が極めて危険だという,広告キャンペーンを張ったのです。力ずくででも,己の直流送電システムをモノにしたかったのでしょう。

しかしそのような交流システムへの強烈なネガティブ・キャンペーンにもかかわらず,エジソンの直流システムはあえなく敗れ去ります。技術レベルが全く違うのですからムリもありませんが,ここでも彼は強烈な立ち回りを見せます。カネにモノを言わせて,自らがネガティブ・キャンペーンを張って消し去ろうとした交流システムを会社もろとも買い取ってしまったのでした。

エジソンの威光の陰で,不当に低い扱いを受けてきたのが,交流システムの開発者ニコラ・テスラです。現在我々が享受している電気文明の恩恵の多くは,彼の開発によると言っても過言ではありません。しかし,多くの人々は,その素晴らしい技術を葬り去ろうとしたエジソンを崇拝するのです。

実業家や投資家にとっては,真に役に立つ技術を自らの才覚と努力で開発した人間が誰か?というよりも,金の流れがどうかと言った方が興味深いのでしょう。

エジソンの時代は,今を生きる我々が実際に経験した時代ではありません。しかし,現代を生きる我々にも経験できたものがいくつかあります。
他人の開発した8086用のOSをごく安く買い取って,MS-DOSと称して世界中のパソコンにライセンス供与して大もうけしたビル・ゲイツと,やはり他人のアイデアを使った電球で大もうけしたエジソンとは驚くほど似ています。今も昔も,アメリカンドリームの実態を見る気がしてなりません。その後の現在に至るネット系企業などの勃興を見ても分かる通りですが,このようなアメリカンドリームが,良くも悪くも,US企業の活力の源泉であるのは確かなのでしょう。

エジソンの最大の業績は,電球の改良の途上で,エジソン効果を見出したことでしょうか。しかし彼はその意味が全く理解出来ず,第3の電極を設けた彼の電球は失敗作でした。もし彼に学問的素養があれば,カネにモノを言わせて電球の発明者の名を取らなくても,真空管の発明者としてエレクトロニクスの先駆者としての名を手に入れる事が出来たはずですが,そちらの名声はフレミングなり,ド・フォーレなりに明け渡すことになってしまいました。

エジソンの業績は電球の改良と独占的量産でした。電球の改良には,日本人もかなりの役割を果たしているようです。三浦順一による二重コイルフィラメント,不破橘三の内面つや消し電球などです。

しかし,やはりその後の,全く原理の異なる,高効率な発光で世の中を変えた,青色LEDが日本人の発明というのは大いに誇れます。仮にエジソンが白熱電球の発明者だとしても,それを日本人が越えたと言っても良いと思います。
nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 5

コメント 2

アヨアン・イゴカー

先週の叔父のお別れの会の帰り道、兄夫婦と一緒でした。その時に、私がSteve Jobsの話をしていたところ、いつしか交流電流のテスラの話を兄が始めていました。エジソンがネガティブキャンペーンの一つとして電気椅子で処刑する際に交流電流を使うようにさせた、数多くの発明をした、少しオカルト的なところがあったが電流に関して言えばエジソンより遥かに偉大だ、と言うようなことでした。
宣伝、自己主張に巧みである人間が、あたかも歴史を作ったような印象を持ってしまうことがありますが、秘話や真実の方がやはり面白いです。公式の歴史は為政者の都合で書かれ纏められたものでしたが、インターネットの時代、そのような情報の一方的な操作は許されなくなってゆくだろうと思います。
by アヨアン・イゴカー (2014-11-30 12:55) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
JobsがWozniakの業績を横取りしたことも有名ですが,彼らは2人3脚でアップル社を創業しましたし,まあそれはそれで良いと思います。HP創業のHewlettとPackardがそうであった様に,彼らはそれをモデルにしたのでしょう。
それに対して,エジソンのえげつなさは抜きん出ています。ビル・ゲイツはそれをモデルにした様に思えます。どちらも世の中にインパクトを与え,大金持ちになったことは事実でしょうが,子供の時エジソン偉人伝にダマされていた私も今となってはエジソンにならなくて良かったと思っています。
お兄様の仰る事,全面的に共感致します。
by Enrique (2014-11-30 14:01) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。