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韓国をルサンチマンにした政権

前新潟県知事の米山氏が山本太郎氏の健闘を「ルサンチマン」という用語で読み解いています。
良くも悪くも,民意の掌握とその操縦術であることは確かでしょう。

政治ショーだったG20,その後の韓国への事実上の経済制裁が発動されました。
何も私は韓国支持ではありません。むしろ厄介な隣国とも思っています。竹島を不法占領し,日本海を東海と呼ぶ失礼さ,70年以上経っても蒸し返す戦後補償問題。日本人の平均的感情からしたら,理解しにくいのは確かでしょう。いい加減未来志向にならないものかと。しかし歴史的に友好関係だった時期も長いわけです。もちろん歴史問題に関する過去の対応がまずかった面もあるでしょう。しかし,過去の経緯と国民性の違いを理解しないで,強硬策に出てもプラスになるのか大いに疑問に感じます。経済的に締め付ければ言うことを聞くのでしょうか?あと報道の問題があります。かつての北朝鮮の扱いが韓国にすり替わったような印象です。

日本国民の半数以上は今回の措置を支持しているのだそうです。
いわば,韓国をルサンチマンにしたのです。

ルサンチマンというのは,本来哲学用語でその定義は,Wikiによれば
「主に弱者が強者に対して、『憤り・怨恨・憎悪・非難』の感情を持つこと」とあります。
日本が韓国に対して弱者ということはないですが,「弱腰外交」という事であれば,部分的には弱者であり,あるいは戦争の当事者として負い目を感じているという事であれば,精神的には弱者ということになります。
誤解を恐れず単純化してしまえば「仮想敵」と言っても良いかも知れません。

戦後の日本人は,悪役英米人を倒す日本人プロレスラーに熱狂しました。戦争に負けた腹いせをそれに求めたと言って間違い無いでしょう。もちろん,プロレスだけではありませんでしたが,民意操縦のためにそれが巧みに用いられました。

例えば,民主的に占領地を返還したアメリカ,日本の敗戦直前に参戦して取った北方領土を返さないソ連(ロシア)として,後者をルサンチマンとしていたことは明白でしょう。確かに小狡いことをしたのは後者ですが,戦争とはいえ原爆や無差別非人道的行為で最も多くの日本人を殺害したのは間違い無く米軍でした。怒りや怨念の矛先を別なところに持っていくのは民意を操縦する意味で大変好適であったのです。

それがかつての自民党の支持基盤の意識構造になっていたことは確かでしょう。
かつてのルサンチマンがその存在意義を失うのとかつての自民党が勢いを失う時期と同期しています。

大阪で橋下というリーダーを得た日本維新の会は,公務員をルサンチマンにして勢力を得ました。大阪人にある東京やお上への反骨精神と見事に同期したのでしょう。

現首相は,まず経済的弱者をルサンチマンにしました。非正規雇用者が大幅に増える政策を断行した結果,収入の低い社会的弱者がふえましたが,その怒りの矛先を,そのように仕向けた社会的強者にではなく,不正受給して優雅な生活を送る者がいるとして,生活保護を受給する本来の社会的弱者に仕向けたのです。

6年前の民主党政権を今だにルサンチマンに使っていますが,それでは足りないと見るや,今度は韓国制裁を発動したのです。かつては,強硬策一点張りで,意味のないアラートを鳴らしまくり,NHKに意味のない放送をさせまくって宣伝した仮想敵国は北朝鮮であったわけです。まるで安倍さんを援護射撃するかの様にミサイルを打ち上げてくれていました。

盲従するトランプのせいで安定していた北朝鮮への仮想敵国性が薄れたと見るや,今度は準同盟国である韓国をそれに見立てたとみられます。首相の施策に溜飲を下げている人も多いのではないでしょうか。しかもその効果は,韓国が反発すればするほど効果的なのです。

北朝鮮のミサイルの代わって持ち出されたのが,韓国海軍の日本の海上自衛隊へのレーダー照射問題です。
あの問題は,本来は防衛省は出したくなかったが,政権側の意向で問題化させたとみられます。いかにも日本側は正当な指摘をしたかの様な報道がなされましたが,実は国益を大きく毀損しています。何とかごまかして収めた防衛相を弱腰だとして非難する意見が出たくらいですから,残念な事に多くの日本人は完全に誘導されしまっています。

日本側の抗議に対して,威嚇飛行をしたとした韓国側の反論を,NHKなどは「いいがかりをつけて来た。」と呆れたように報道しました。威嚇飛行かどうかは別として,哨戒対象に対して低空飛行するのは海上自衛隊のお家芸だったのです。長年その技術で日本近海の海上の安全を守って来たのです。しかしレーダー照射問題を取り上げることで,いわば,手の内を白日のもとに晒してしまったのです。韓国側からそれを言われた日本側は,中国やロシアからは,危険飛行と言われたことが無いと反論しましたが,今後言われかねない前例を作ってしまったのです。韓国側は今後事あるごとに海上自衛隊の哨戒飛行をつついてくるかもしれないですし,中国やロシアからつつかれても仕方なくなってしまった。現場の長年の苦労を逆に他国のカードにしてしまったのです。

国益上は失敗していますが,韓国憎しの国内世論を盛り上げるのには役立ってしまったのです。また一つ日本劣化の悪いカードを切ってしまったのです。

少し考えればわかる事ですが,日本の自衛隊の哨戒機にレーダー照射して韓国側には何のメリットもありません。もちろん間違いで照射した可能性も否定できません。韓国の駆逐艦が他の船舶を救助中に,迫ってくる海自機をうるさく感じたのかもしれません。しかし,韓国側が要求する日本側のまともな証拠もないのです。日本側は動かぬ証拠を突きつけたが,韓国側はぐだぐだの反論を繰り返したというのが日本側の報道でしたが,これは事実に基づかず,むしろ軍事の前線に疎い日本人に誤ったメッセージを与えたというべきでしょう。

海自は照射されたとする電波の周波数も公開していませんし,読売新聞が「決定的証拠」とか言ってたものは数十秒の雑音音声のみでした。はっきりとした証拠も出せない上,こちらの手の内を明かされてしまったのだから,収めるしかなかったのです。裏読みすれば,韓国は認めるわけないから余計に好適だと考えたとしたらより悪質です。今回の経済制裁は,レーダー事件以前から極秘裏に検討されていたのです。

「お前は韓国の肩を持つのか?」と叩かれそうです。
韓国憎しの国内世論は,「韓国軍は日本を攻撃しようとしていたのでは無いか?」という危険なメッセージになってしまいました。無論,仲良くしていれば,多少の行き違いは飲み込めるのでしょうが,いくら嫌いな日本に対してであっても,そんなことをして日本側に非難されたら損なことくらい彼らだって分かるでしょう。このレーダー照射問題が出た時,田母神俊雄氏は,即刻「全く問題ない」とツィートしました*。彼の経歴からして,事の本質がわかっていたのです。これは,軍事的な問題では全く無くて,安倍政権のプロパガンダであった大きな傍証になります。防衛省が表沙汰にしたくなかったのは当然でしょう。

今回の韓国への経済制裁を正当化(少なくとも日本人への感情)させる布石となってしまった(故意に行った)ことは事実でしょう。韓国の世論が,「日本に楯突いたのが悪い」となるのか,事実に基づかない理由で制裁を実行してくる安倍政権に対してより反発を強めるのか。なにぶん「怨の国」ですから,後者の危険性が高いと思われます。表向き従わせても,反日感情をより溜めさせるのは得策でないと思います。

政権内の最も強硬な意見を取り入れたとの報道です。
リベラルな姿勢の文政権を兵糧攻めにするようです。「よくやった」と思っている人からしたら,異を挟む人間に対しては,そういう奴は韓国同様ケシカランとなるでしょう。いまだに戦前の問題を蒸し返す韓国社会も明らかに未成熟ですが,そこは大人の対応をしないといけません。何事も感情論で迫ってくるというのが,韓国に対するネトウヨ界隈の意見ですが,事の正確さを分析せずに,プロパガンダに騙されて日本スゴイを振りかざすのは,韓国の反日無罪と同じレベルです。誇り高き日本人がやる事でしょうか?

大事な事を忘れていました。ヒトラーはユダヤ人をルサンチマンにしたわけです。

*現在彼は,韓国の第三国への武器関係の不正輸出はけしからんと言っています。
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momotaro

この度の日本の対応はルサンチマン的ですよね。
政府間合意を無視して協議に応じないやり方が一方的なので、屈折したやり方で意思表示しているのでしょうね。
あちらのやり方もルサンチマン的心情なんですよね。
もっと大所高所に立ってリードできないものでしょうかって思いますが、今の指導者ではとても無理ですね!
by momotaro (2019-07-16 11:47) 

Enrique

momotaroさん,
韓国は反日で政権維持をしていると言われます。そんなあちらの教育を改めてもらわないといけないわけですが,あっちがやるからこっちもやるでは,火に油を注ぐようなものです。相互互恵になる大人の対応ができないものでしょうか。首の締め合いをして,俺の方はあまり苦しくないぞと言っているようなものです。今回の措置で困り方がひどいのは韓国の方ですが,日本側だって返り血を浴びます。「ざまーみろ」と一時的な気分を良くしたって,こちらにも損失あるわけですから,賢くないですね。政治上の対立は仕方ないにしても韓国民は敵に回さない方が良いと思いますね。
by Enrique (2019-07-16 22:16) 

アヨアン・イゴカー

現政権は、仮想敵国を設定し、憎悪を煽りナショナリズムを強め、権力集中化を正当化しようとしているように見えます。
徴用工問題は、被害者である個人が、企業と言う組織に対して損害賠償を求めているだけであって、国家間の問題ではないと思います。訴えられた企業は、法廷で戦えばよいのではないかとも、考えます。

外交でことごとく失敗している現政権は、国民の目を如何にして逸らすか、それに躍起になっているようにしか映りません。
領土問題は、両方に主張する根拠がある時に一方的に権利を主張するのは正しい公正なやり方ではないと思います。国際司法裁判所に判断を委ね、決定には従う、それが一つの解決方法ではないかと。

北方領土と主張している島々にしても、元々日本人が住んでいたのではなく、アイヌなどの民族が住んでいたのであり、彼等の意見が本来は一番優先されるべきだと、個人的には思っています。

中国、韓国、北朝鮮等の国々とは対立するのではなく、対話、情報の共有、歴史の共同研究などやるべきことは山積しています。
by アヨアン・イゴカー (2019-07-17 15:45) 

Enrique

おっしゃる通りです。
昨今の関係悪化は,徴用工問題を取り上げているわけですが,その判決に韓国政府が関わることを三権分立を理由に対応を拒んだというのは民主主義国家としての形式上は正しく,「子供の喧嘩に親がなぜ出てこないのだ?」と一方の親が言っている様なもので,かの対応を感情的に批判するのは,少なくとも民主主義国家としての認識は先方以下だと叫んでいる事に他なりません。これを国家間の問題として取り上げて,その事実上の報復に溜飲を下げる人がいるとしたら大いなる劣化といわざるを得ません。
近隣諸国とは相互互恵関係を模索する必要があります。現政権は経済優先と言いながら,それさえ自らの権力集中のために毀損しています。
by Enrique (2019-07-18 07:43) 

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